聞き取る力

今回は聞き取る力について書いていきます。

先日ラジオで人生相談のコーナーがありました。
私もカウンセラーとして常日頃人の悩みを聞く立場ですので、悩みを聴く方がどんな話の展開をするのかや終結をするのか興味を持って聞いていました。

電話で相談してきた方はまだ20代の学生で悩みは「物を捨てられない」という悩みです。
状況確認のために色々と本人に訊いていきます。
物を捨てられなくなったきっかけや、家族の構成、学生時代のことなど多岐に渡ります。
実はこの関係ないようなことでも訊くことにより、その方の考え方や価値観、そして心理が見えてきます。

話の展開の仕方など参考に「なるほど」と聞いていました。
相談されている方の概要としては、今は一人暮らしで弁当を食べた箸の袋や使い終わったペットボトルまでもが捨てられなくて困っているとのこと。
なぜ捨てられなくなったのかと言えば、一人暮らしになり家を出た後、小学生の頃に大事にしていた物を親が整理し捨ててしまったとのこと。
また「学生生活は?」と訊けば、「彼女はこれまでいなかった」と同時に「友達と呼べるような人もいなかった」とのこと。

よく聴いていると「思い出」というキーワードが出てきていました。
私はその本人はその物(箸の袋や使い終わったペットボトル)に特別な思い出はないが、思い出が消えてしまうのを恐れているように感じました。
悩みを聴いている方は一通りの概要を聴くとラジオで時間に限りがあるので自分の意見を述べ始めます。
結局は「ただの箸の袋や使い終わったペットボトルなのでそこに思い出を求めても仕方がないからちょっとずつ捨てていくようにしよう」といったまとめで終結していました。

私はそこで思ったのは、「それがわかっているけど捨てられずに悩んでいるんだ」ということです。
誰もが正しいことを理解しその通り行動ができれば悩みにはなりません。
それよりも注目すべきことは「何で物に対しての思い出に執着してしまうのか亅という部分です。
そこには「小学校の頃から大事にしていた物を親に勝手に捨てられた」ということが本人にとってとても重要なことなのです。
友達もいなかったということですから、きっとその物に対する想いは「自分がこれまで生きてきた証だったのではないか」と想像します。

誰にでも自分の中で大事にしている物だったり、自分に対しての自信だったり、自分の大事な価値観など様々なソースがありますよね?
そのソースをしっかりと持つことにより未来の自分の行動へと繋げることができるのです。
そしてそのソースはたった一つではなくいくつか存在するはずです。
ですので、もし一つ失ったとしても他のソースなどで補填し自分を慰めてくれたり、元気づけてくれたりするのです。
しかしいくつかあるそのソースを忘れてしまっていることが問題なのです。

つまり今回の相談のケースで私ならば、無くなってしまった思い出は物にも勿論ありますが物以外にあるものはないのか探してもらいます。
それを集める時に苦労したこと、自分の欲しかった物が手に入れたときの喜びはあくまでも物がトリガー(何らかの動作を開始するためのきっかけとなる命令や信号のこと)になっているだけで他のトリガーに置き換えることができるかを探してもらうなどです。
もちろん他にも方法はあるかもしれませんし、実際にやってみてダメかもしれません。
しかしそこで物にこだわることに意味がないと腑に落ちてくれればきっと言われている「物に思い出を求めても仕方がない」が潜在的に理解でき行動できるようになるのです。

今回の最も重要だった部分を聴き取り納得してもらえなければ話の展開に意味を持たなくなります。
聴き取る力はすぐに身に付けることはできないかもしれませんが、話をする人が「今何を伝えたいのか」をしっかり聴くことが聴く事になるのではないかと感じました。

また今更ですが最初の方に「聞く」「聴く」「訊く」を使い分けているのに気が付きましたか?
何故使い分けているのか考えてみるのも面白いと思いますよ!

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